森と里のつながるマルシェ

土に根ざした暮らしを見つめ直すオーガニックマルシェです(開催場所:栃木県茂木町)

【森里インタビュー】田舎で八百屋に~美味しい・楽しい・嬉しい!!を間口に~【2022冬編⑦前編】

森里インタビュー企画2022冬編第7弾。
今回は自然栽培・有機栽培の自然食品の宅配、飲食店のへの卸売りやイベント出店を展開している「ナチュラルフード森の扉」の野原典彦(のりひこ)さんにお話を伺いました。野原さんは里山文化に触れるワークショップなどの企画・運営も行なっています。今回は前編と後編に分けてお送りします!
 森と里のつながるマルシェのキーパーソンとなる野原さん。現在に至るまでにはどんな過去・思いがあったのでしょうか。野原さんの心の扉を開けてみましょう。ちゃんとノックを3回して、お伺いを立ててから、スタートです!!

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野原典彦さん(のはら のりひこさん)
心理学との出会い

野原さんは栃木県真岡市のお生まれ。関東平野の中の田んぼがたくさんの地域で育ちました。小さい頃は近所のお百姓さんが農業で大変な思いをしているのを見ながら育ったため、自分は農業なんてやりたくないと思っていたそうです。大学は人文学部人間関係学科に進学し、社会学・教育学・心理学を学びました。そこで学んだ大衆心理のメカニズムが今でも参考になっているといいます。大学卒業後は金融関係の仕事に就職。人文学と金融という一見関係のなさそうな分野ですが、市場は大衆心理が動かしている世界なため、大学で学んだ心理学が諸に活かされました。市場の傾向をグラフにして分析し、溢れかえっている情報を掻き分け読み取り、40歳まで情報合戦の世界で鍛えられました。野原さんが新卒の時代はちょうどバブルの時期。周りの大半の人が内定した銀行を進める中、「誰もやっていないことをやりたい。みんなの逆を突きたい。」という天野邪気精神もあり、金融の世界に飛び込みました。野原さんの穏やかな表情からは想像できない意外な一面が見えてきましたね。

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穏やかな表情の野原さん
食べ物でこんなに違うんだ

野原さんは30歳の時に独立。上場企業の一室を借りて朝から晩まで分析する日々が続きました。長時間数字の計算をしているため、とにかく甘い物が欲しくなり、当時は甘い缶コーヒーを1日で3~4本飲む癖がついたそうです。そんな多忙な日々を送る30歳半ば頃、いつのまにか背中が痛むようになり、眠れなくなるほどの痛みを抱えるようになりました。どの病院に行っても異常なしと診断され、精密検査をしても異常なし。痛みはあるのに原因が突き止められなかったそうです。そこで、自分でその痛みの原因を調べていくうちに、自然食や玄米食で身体を治していく奨励を目にし、「これだ!」と思い実践しました。お昼も事務所で玄米おにぎりを食べる。すると、半年も経たないうちに中の痛みが解消されたそうです。「食べ物でこんなに違うんだ。」と実感し、その頃から自然食品を摂るようになり、遺伝子組換えや日本の農業・社会の構造まで、どんどん興味を持ち始めました。

田舎に住んでオーガニックの八百屋になろう

農業に関心が広がり、野原さんは「日本の農地を守りたい。中山間地域で頑張っている有機農家さんを支援したい。特に“タネ”を、中山間地域の在来種を守っていきたい」と思うようになりました。福島県天栄村(てんえいむら)の有機農家さんと知り合い、当時住んでいた神奈川県と福島県を行き来する生活が始まります。2009年に脱サラして約2年間、生産者グループを訪ね歩き、ネットワークを構築しました。そんな矢先に3.11東日本大震災が発生。原発放射能汚染への懸念から、食への不安があった福島の知り合いの方が、安全な九州の作物が欲しいと野原さんに依頼をしてきました。野原さんはその依頼を受け、その方に九州産の作物を届ける仲介役を担うようになりました。その経験をきっかけに野原さんは卸売業を始めます。そして、茂木町の農家さんから「古民家を見に来なよ」お誘いをいただいたことで「田舎に住んでオーガニックの八百屋になっちゃおう」と決心し、2011年に茂木町に移住し10年間活動を続けています。本来であれば、人口の少ない田舎でオーガニック作物の卸売りを行なうのは利益が出にくいため、避けるそうです。しかし、野原さんは茂木町を選び、八百屋を始めます。色んな方とのご縁で茂木町に巡り会ったんですね。
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シェアする農業・自産自消

野原さんが行なっている取り組みの一つに “シェアする農業”という取り組みがあります。茂木町・益子町足尾町の3カ所の休耕地や耕作放棄地を利用して、各地域の在来作物をメンバーの皆で栽培する農業です。栽培に関しては指導者や農家さんは付けずに自分達だけで研究しながら栽培を行なっています。そこでは、収穫して皆で分けて終わりではなく、収穫して6次化まで行ない、自産自消しているのがポイントです。メンバーの皆さんは自分達で栽培した安全な食品を購入でき、定価より安い卸売価格で購入できる仕組みになっています。野原さんは、生産性の低い里山で、生産性を持たせるような仕組みづくりができないか考え続けています。

茂木町小深(おぶか)地区では、ササニシキや日本晴れなどのアミロペクチンの少ないお米、小深在来の大豆、古代小麦を栽培しています。益子町では“たねまきびと”というグループで、戦前から続いている「花魁(おいらん)」という品種のさつまいもを栽培。さつまいもの断面がお花模様に見える品種です。足尾町では「唐風呂(からぶろ)ダイコン」という絶滅寸前の品種を栽培。鮮やかなピンク色が特徴の在来種です。足尾町足尾銅山があった場所でもともと農家が少なく、現在唐風呂ダイコンを栽培しているのは2名程度だそうです。不思議なことに唐風呂ダイコンを宇都宮市や益子町で育てると、年々ダイコンのピンク色が薄れていってしまいます。足尾町の唐風呂地区の環境でないと鮮やかなピンク色にならないそうです。そんな希少なタネを野原さん達が守り、つないでいきます。
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棚田で収穫したお米でお餅つきを企画

美味しい・楽しい・嬉しい!!を間口に

農業にはグローバルな流れとローカルな流れの、2つの流れがあるといいます。野原さんが行なっていることはローカルな流れ。グローバルとローカルは対極的に見えますが、壁を作るのではなく、協働して融合していくことが大切であると野原さんは考えています。誰でも、どんな立場の人でも、美味しい物は食べたいし健康にはなりたいはずです。グローバル:ローカルと壁を作るのではなく、隔たりを無くし両者が∞(八の字)のように循環していくようなつながりを作ることが、野原さんが八百屋としてできることではないかと考えています。
オーガニックについて、たくさんの人に興味を持ってもらえるように“美味しい・楽しい・嬉しい”を間口に発信し、そこから農業や環境問題にも目を向けてくれる人が増えるといいなと仰っています。宇都宮市で新しくマルシェを始めた際は、開始から1年半は赤字でした。しかし、続けていくうちにお客さんがマルシェを楽しみに待ってくださるようになりました。出店していた場所の目の前のラーメン屋さんが野原さんからオーガニックの醤油を買い使ってみたら、「ラーメンの味が激変して美味しくなった」と継続して使って頂けるようになったり、気の毒そうに思ったのかたまたま野菜を買ってくれた方が、「食べてみたら美味しかったから」とその日の午後にまた買いに来てくれたりと、マルシェを続けていくうちにいろんな化学変化が起こり、口コミでだんだんオーガニックが広がっていきました。グローバルとローカルの融合、オーガニックを知らない人とオーガニックの世界をつなげる役割を今後どのように担っていけるか。野原さんは企業と連携するなどの新しい挑戦をしながら、八百屋としていろんなひと・もの・ことをつなげています

冒頭で「森と里のつながるマルシェのキーパーソンとなる野原さん」と紹介しましたが、まだ紹介できていませんでしたね。野原さんと森里マルシェとの関係は後編でお伝えします。ではまた、後編で👋
(構成:西山ゼミ3年 鈴木)

実は私と林くん、大学1年生の頃に野原さんが企画・運営したマルシェや太白芋の干し芋づくりワークショップに参加していたんです。普段の生活では体験できないことを1年生で経験させていただき、楽しく・美味しく、農業や里山文化に触れることができました。3年生となった今では、まだまだ知識不足ですが持続可能な農業について真剣に考えています。私達も野原さんに、農・食・里山文化の扉に導いていただいたんですかね。これからドアをたたき、力強く扉を開けるのは、私達個人個人。精一杯頑張っていきます!!

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大学1年生で参加した干し芋づくりワークショップ (左から林・鈴木・一緒に参加した友人)

(写真:西山ゼミ山田・鈴木、ナチュラルフード森の扉HP)
★オンラインマルシェ開催期間:2022/01/29(土)~2022/02/13(日)・発送:2/18(金)
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開催中です!!!よろしくお願いいたします!!!

★森と里のつながるマルシェHP
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