森と里のつながるマルシェ

土に根ざした暮らしを見つめ直すオーガニックマルシェです(開催場所:栃木県茂木町)

【森里インタビュー⑤】里山でマイペースに 沓掛さん

インタビュー企画第5弾。今回は上菅又地区で有機栽培を行っている沓掛栄一さんだ。四方を山に囲まれた環境の中で、約7反の畑を一人で管理している。茂木ゆうきの会でも活躍中の彼はどのような想いをいだいているのだろうか。

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沓掛栄一さん 八雲神社境内にて撮影
原体験と反抗心

6月某日、私たちは沓掛さんにお話しをうかがった。寡黙だが、時折みせる笑顔が素敵な方だ。沓掛さんは栃木県真岡市のご出身。県外で就職したが、就農を期に茂木にやってきた。なぜ生まれ故郷である真岡市ではなく、茂木を選んだのか。そのきっかけは子供時代の体験だ。
「子供のころ山遊びや自然遊びで茂木や益子に来ていました。山菜取りとかキノコ採りとか。真岡市って開けちゃってできないので。真岡には自然が残っていなかったけれど、茂木には自然が残っていていいなと」子供時代の景色を振り返って語ってくれた。「茂木町が農業や自然にかかわるなら一番親しみやすかった」また文明に対する反抗心を抱いていた。「文明に頼っているのは間違っているという考えがあって。将来は科学に頼らないで自給自足の生活を送りたいなと思っていた。」背景にあるのは日本列島改造論だ。田中角栄が提唱した政策構想は国土開発の基礎となった。一方で、自然な遊び場が失われるということでもあった。「真岡市もその一例で。鬼怒川も護岸工事などで急速に遊び場でなくなってしまった」目の前で奪われていく遊び場。奪っていく大人たち。強い原体験であった。

マイペースに、好き勝手に

こだわって突き詰めるよりも、精神的に無理をせず、マイペースにやれるほうが自身の気性に合うという。「マイペースに作業ができればそれで満足。こだわりというよりも、辛くなくて、めんどくさくなくて、それでお金を稼ぐことができればいいなと」飲食店に卸していたこともあったが、会計の煩雑さなどもあり、現在は生協や地場野菜などに販路を絞っている。ただ個人でこれまで付き合ってきた人との縁がなくなっているわけではない。商売上の付き合いはなくとも、余った野菜のおすそ分けなど交流は続いている。「茂木は好き勝手にできるところであり馬があう」茂木の風土で自由に生きている。

巨人の肩の上に立つ

農作業は単調な作業が続きがちだ。ラジオや音楽を聴きながら農作業をする農家さんも多い。沓掛さんもAudiobookを聴きながら作業を行っているが、内容は哲学書だ。師事するのは、不立文字と呼ばれる禅の見性の境地を、文字として表すという不可能を可能ならしめた鈴木大拙西田幾多郎井筒俊彦といった東洋哲学の偉大な先達者達。これらの先達が成し遂げた見性の深淵な文章化を、昨今のノンデュアリティ(非二元)という新時代の悟りの分かりやすい表現と融合させて、新旧の悟りの境地表現の融合という、深遠さと分かりやすさを両立した新たな文章の創出を目論んでいる。もくもくと作業を続ける。ひしひしと伝わるのは真摯さ。そしてよろこび。
「本を読みながら農作業ができる。満たされている感じがする。楽しいです」
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好きなこと、無制限。これもまた茂木の魅力。
(文・構成:菊池 写真・構成協力:山田)

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morisato-m.jimdofree.com
開催期間:6/26(土)~7/10(土)